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データサイエンティストがつらいと感じる原因の多くは、仕事量ではなく、成果が自分の手の届かない場所で決まることにあります。分析の精度をどれだけ上げても、その結果を使うかどうかを決めるのは分析者ではないためです。
本記事は、そのつらさを、いまの環境で起きていることと、この職業である限り起きることの2つに切り分け、続ける・動く・辞めるの判断材料にする記事です。つらさの正体、切り分けの問い、動いたほうがよいサインの順に整理します。
- つらさの正体は仕事量ではなく、成果の決まる場所が自分の外にあること
- 切り分けの基準は「会社を変えても付いてくるか」の一点
- 判断は「切り分け→社内で動かせるかの確認→外に出るか役割を変えるか」の3段
データサイエンティストは何がつらいのか?
データサイエンティストのつらさは、仕事量の多さからではなく、成果の決まる場所が自分の外にあることから生まれます。分析の精度を上げることは自分の裁量でできますが、その結果を採用するか、業務を変えるかを決めるのは分析者ではないためです。
職業としての全体像とやりがいはデータサイエンティストはつらい?やりがいと仕事の実態を経験者が解説で扱っています。本記事が扱うのは、すでにその職に就いている人がつらさの原因をどう切り分けるかです。突発的な忙しさや責任の重さも実在しますが、その2点は同記事の側にあります。
ビジネス目線と分析目線がかみ合わないという苦労
分析の結果そのものが使われないという状況は、スキルが足りないうちに起きやすい苦労です。それよりも長く続くのは、ビジネス目線と分析目線の乖離です。分析としてはこうだ、という結論がビジネス側にうまく伝わらず、話がちぐはぐになる場面は、データ活用・AI活用で約50案件に関わってきた私の経験でも繰り返し起きました。
ビジネス側は細かい分析のロジックまでは分かりません。そのため、根拠の筋道よりも「報告に使えるものをくれ」という要求になりがちです。一方で分析者の側は、ビジネスを深く理解していなければ、相手が何を決めたくてその数字を求めているのかを読み違えます。両側に歩み寄りが要るのに、歩み寄る負担は分析者に偏る。これがこの職業の最初のつらさです。
データ整備の作業量が相手に伝わらないという苦労
分析者の仕事は、モデルを作る工程だけではありません。定義が曖昧な項目を決め直す、途中で意味が変わった区分を揃える、部署ごとに違う集計単位を突き合わせる。こうしたデータ整備の上流工程を自分で引き受けるところまで含めて、分析という仕事です。
この工程に時間の大半を使っても、外からは見えません。報告に残るのは最後に出た数字だけで、相手が分析の実務をよく知らない場合、整備の作業量の大変さは伝わらないまま進みます。
私の実務で、しんどさが具体的な形をとったのは、技術的な観点の会話が通じない場面でした。データ整備に時間がかかるということがなかなか伝わらないまま進む状況には、特に難しさを感じました。
伝わらない背景にあるのは、ビジネスサイドがデータはすでに綺麗に揃っていると思っている、という前提のずれです。整備に必要な時間を工程として認めるかどうかは相手側の理解で決まるため、成果の決まる場所が自分の外にあるという構造はここにも現れます。
学び続けなければならないという苦労
3つ目は、技術の発展に日々ついていく必要があることです。手法もツールも更新され続けるため、キャッチアップを継続的にやらなければ、数年で使える引き出しが古くなります。
これをつらいと感じるかは人によります。大変なのは、既存の業務を抱えたまま、その上にキャッチアップの時間を積まなければならないことです。案件が忙しい時期ほど学ぶ時間は削られ、削った分は後から効いてきます。
そのつらさは職業の構造か、いまの環境か?
切り分けの基準は、そのつらさが会社を変えても付いてくるかどうかの一点にあります。付いてくるものが職業の構造要因で、付いてこないものがいまの環境要因です。2つを混同したまま動くと、転職しても同じつらさに戻ります。
先に例外を1つ置きます。健康を損なう水準の負荷は切り分けの対象にしません。眠れない、体調が戻らないという段階なら、原因の分析より先に離れる判断を優先してください。
切り分けには3つの問いを使います。1つ目と2つ目で消えるものが環境要因で、3つ目に当たるものが構造要因です。
- そのつらさは、担当する案件が変わったら消えるか
- そのつらさは、意思決定する人が変わったら消えるか
- そのつらさは、この職業の定義そのものから来ているか
| 感じているつらさ | 環境要因の可能性 | 構造要因の可能性 |
|---|---|---|
| 分析結果が使われない | 報告先と案件の選び方が合っていない | 採否を決める権限が分析者にない |
| データ定義が整っていない | その組織のデータ基盤が未整備 | 整備の工程が相手から見えない |
| 企画の段階に呼ばれない | 役割分担が固定されている | 企画を決める権限が分析者にない |
同じ症状でも原因は両側にあり得るため、症状の名前ではなく、案件と意思決定者を変えたときに消えるかで判定します。判定はいまの組織で試せば済み、変わらなかったものが構造要因の候補として残ります。

データサイエンティストという職業の構造的な限界そのものは、データサイエンティストの志望動機|面接官が見る3つの軸で、転職理由として言語化する形で扱っています。
約500名規模のコンサル系企業で100人規模の組織を率いていた頃、私は面接を100人以上担当しました。辞めていく側と次の職場を選ぶ側を同じ時期に見ていた立場から言えるのは、口にする言葉が同じでも原因は同じとは限らない、ということです。
分かれ目になっていたのは、データ分析そのものが好きかどうかでした。訴える言葉が同じでも、分析が好きな人とそうでない人では、つらさの落ち着き先が違っていたというのが私の観測です。
好きかどうかの実体は、細かいところをしっかり突き詰めて考えられるかどうかにあります。定義のずれや合わない数字を放置せずに追える力は分析という仕事の中心にあり、続けられるかどうかを決めていました。
突き詰めて考えることができない人は、データ分析者としては難しい。私が見てきた範囲での結論はここに落ち着き、この形のつらさは環境の問題ではなく職業の側の要因として残ります。
データサイエンティストのやりがいはどこにあるのか?
データサイエンティストのやりがいは、つらさと同じ根から出てきます。自分の外で決まるはずの意思決定を、自分が出したもので動かせた時にしか手に入らない種類の手応えだからです。
決められない立場であることは、裏を返せば、決める人を動かせた時の手応えが大きいということでもあります。分析の完成度が上がった瞬間ではなく、誰かの判断が変わった瞬間に、この仕事の報酬が発生します。
判断が変わるかどうかは分析の外側で起きるため、この手応えは狙って作れません。やりがいの実感が人によって大きくばらつくのは、そのためです。手応えを得た回数は、能力よりも置かれた場所に左右されます。
やっていてよかったと感じたのは、自分のデータ分析でビジネスが動いた時です。良い意思決定につなげられたと感じられた場面が、私が分析の仕事を続けられた理由でした。
30代でこの仕事を続ける・入るのは現実的か?
30代で続けることも、入ることも現実的です。ただし入り口の条件は数年前と変わりました。実務経験3年未満の層は応募者が求人を上回り、5年以上で案件をリードできる層は売り手市場という二極化が起きています。
二極化は、私が採用とマネジメントに関わった範囲での観測であり、公的な統計ではありません。データサイエンス教育の裾野が広がり、基礎的な分析スキルを持つ人材が市場へ継続的に流入した結果として起きています。
不足しているのは、分析ができる人ではなく案件をリードできる人です。配下につける人はいるが、リードできる人材がいない。各社の採用要件を聞いてきた範囲では、この状態がどの会社でも起きていました。
30代・未経験でこの職を目指す場合と、30代で現職を続ける場合とでは、見るべき条件が違います。未経験から30代で入る側の手順は徹底解説!未経験からデータサイエンティストになる方法は?で、この職業を選ぶ理由の側は30代にデータサイエンティストがオススメの職業な理由で扱っています。
続ける側にとっても、二極化は判断の材料になります。実務経験が5年に近づいているなら、案件をリードした経験を職務経歴に残せるかが次の選択肢の幅を決めます。
うまく立ち上がった人に共通していたのは、とにかく柔軟なことです。既存の考え方を前提に置くのではなく、データやファクトに基づいて思考し行動できるかどうかが、私が採用側で見てきた範囲での分かれ目でした。
辞めるか、動くか、続けるかはどう判断すればよいのか?
判断は3段の順序で進めます。つらさを環境要因と構造要因に切り分ける、環境要因なら社内で動かせるかを確認する、構造要因なら職業の外に出るか中で役割を変えるかを決める、の順です。この順序で言語化できた転職理由は、面接でも説明できる形になります。
順序を飛ばすと、転職理由は「つらかったから」で止まります。切り分けを済ませてから動くと、転職理由は「この条件が変わらない限り解けない課題があった」という形に変わります。伝え方そのものはデータサイエンティストの志望動機|面接官が見る3つの軸で扱っています。
2段目の環境要因は、辞めなくても試せます。3か月から半年ほど働きかけて何も変わらなければ、環境要因ではなかったという結果が手に入ります。
3段目の構造要因には、職業の外に出る道と、この職業の中で役割を変える道の2つがあります。切り分けが終わっていれば、どちらの場合も求人票のどこを見ればよいかが決まります。エージェントの選び方と比較はデータサイエンティスト転職エージェントの選び方【2026年版】にまとめてあります。
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よくある質問
つらいと感じたら、何年続けてから判断すべきですか?
年数ではなく、環境要因を試し切ったかどうかで判断してください。担当案件・報告先・関わる工程を変える働きかけをして、3か月から半年ほど様子を見ても変わらなければ、年数にかかわらず環境要因ではなかったという結果が出ています。
つらさを上司に相談しても伝わらないのはなぜですか?
原因が上司の権限の外にあることが多いためです。分析結果を採用するか、データの定義を誰が決めるか、企画の段階に誰を入れるかは、直属の上司ではなく事業側や別部署で決まっている場合があります。伝わらないのは説明が下手だからではなく、相談相手が動かせる範囲と発生源がずれているためです。
データサイエンティストの苦労は、データアナリストやデータエンジニアでも同じですか?
構造は共通しますが、現れ方が違います。成果の採否を自分で決められない点は3職種に共通する一方、アナリストは報告の受け手との距離が近く、エンジニアは成果が動くかで判定されるため、使われないという形の苦労は出にくくなります。
分析が好きなだけでは続かないのでしょうか?
続けられますが、置かれる場所を選ぶ必要があります。分析の完成度そのものが評価される場所は存在し、研究開発やプロダクト組み込みの領域がそれにあたります。ただしその枠は多くないため、好きという動機だけで職場を選ぶと、成果の採否を他人が決める構造に当たり続けます。
まとめ
データサイエンティストのつらさは、いまの組織で起きている環境要因と、この職業である限り起きる構造要因に分かれます。切り分けの基準は、そのつらさが会社を変えても付いてくるかどうかの一点です。
切り分けを済ませてから動くと、転職理由は「つらかったから」ではなく「この条件が変わらない限り解けない課題があった」という形になります。順序を飛ばして動くと、同じつらさに戻ります。
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構造要因だと分かったら、外の条件を先に確かめる
つらさが構造要因の側だと分かった場合、次に必要なのは求人に応募することではなく、外の条件を知ることです。分析の採否を誰が決める建て付けになっているか、企画の段階から関われる枠があるかは、求人票の職種名からは読み取れません。守備範囲の違うサービスに同じ経歴を見せると、どの条件なら自分の経験に反応があるかが分かります。下記は相談・登録がいずれも無料で、ITコンサル・DXコンサル特化1社とハイクラス総合1社で扱う領域が異なります。
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